スーツをお仕立てする際に、毎回慎重になるのが「着丈」です。

着丈とは、ジャケットの丈の長さのこと。背中側の、襟の付け根から裾までの長さを指します。
少し長さが変わるだけでも、全体の印象が変わる部分です。だからこそ、お客様にとって心地よい長さを見つけるのは、なかなか難しいものです。
数字は、あくまでも出発点です
私が着丈の目安として教わったのは、採寸項目のひとつである「総丈」を基準にする方法でした。
「総丈の半分から、2cmほど引く」
その時々の流行によっても変わりますが、まずはこの数値をひとつの目安にします。

ただし、その計算だけで着丈を決めるわけではありません。
実際にサイズ見本をお召しいただき、鏡で全体のバランスをご確認いただきます。必要に応じて裾を折り、短くしたときの見え方も確かめながら、お好みの長さを探していきます。
「どう見せたいか」も大切に
着丈は、長めであればクラシックで落ち着いた印象に。短めであれば、若々しく軽快な印象につながります。
とはいえ、身長が高いから長く、小柄だから短く、と単純に決められるものでもありません。

胴や脚の長さ、肩まわりの見え方、パンツとのつながり。そして何より、お客様ご自身が「これがいい」と感じられるかどうか。
数字と見た目、お客様のお好みをすり合わせていく。その難しさを、日々感じています。
お仕立て後に気になることがあれば
ご相談しながら決めた着丈でも、出来上がった一着を着てみると、「もう少し短いほうがよかったかな」と感じられることがあります。
その際は、どうぞお気軽にお申し付けください。

できれば実際のジャケットをお持ちいただき、もう一度お召しいただいたうえで、全体のバランスを確認しながら調整する長さを探っていきます。
仕上がった着丈を長くすることは基本的に難しいのですが、短くする方向であれば、調整できる場合があります。ただし、ポケットの位置やデザインとのバランスもあるため、数センチの調整であっても、実物を拝見してご相談させていただきます。
一着目の気づきを、次の一着へ
初めてお仕立てする一着では、お渡しした後に調整の工程が入ることもあります。
着て初めて分かることや、日常の中で見えてくるお好みもあるからです。
一着目でいただいたお声を、二着目にはよりよいご提案につなげたい。そのためにも、お仕立て後の小さな違和感まで、遠慮なくお聞かせいただければと思います。
「この長さが、やっぱりしっくりくる」
そう感じていただける一着を目指して、精一杯対応させていただきます。